こぼれ話 社史が人を伸ばす!
社史が人を伸ばす!
「いやぁ、一時は会社辞めたろか、と思いましたよ」
晴々した顔で、入社2年、20代半ばのAさんはおっしゃいました。
Aさんは、入社したその年、社史の編纂担当者に任命されました。このとき、5年がかりの編纂プロジェクトは4年目に突入していましたが、メンバーの日常業務は多忙を極め、スケジュールは遅れ気味。“この事態を打開するためには、メンバー間の連絡や元資料との照合など事務的な作業をする専任担当者が必要だ、しかし、いま割ける人手は新入社員くらいしかない”……これが、Aさんが社史担当を命じられた理由です。
それから2年、Aさんは社歴も地位もはるか上の方々の間を走り回り、資料の山に首を突っ込み、文字どおり八面六臂の活躍でした。会社のことも、社史のことも知らないのに、上から指示がどんどん降ってくる。このプレッシャーは相当なものだったでしょう。制作会社の編集担当者として、私も連日のように電話やメールで相談を受けましたので、最後はAさんと二人三脚で完成というゴールに向かっている気持ちになりました。
ですから、完成後に最初にお会いした時、真っ先に口をついて出た言葉は、「大変でしたね。よく耐えられたと思います。本当にご苦労さま」でした。冒頭の一言は、その時Aさんから返ってきた言葉です。でも…とAさんは続けられました。 「上司から言われたんです。おまえ、入社2年目で会社に一番詳しい人間の一人になったんだ。これは大きな財産だぞ、って」
その時の面映ゆげな、そして、少し誇らしげなAさんの表情は、編集担当者時代の私の大事な財産のひとつです。 (企画営業担当 吉田武志)