こぼれ話 社史制作を通じコミュニケーションが円滑化

社史制作を通じコミュニケーションが円滑化

不況の長期化に伴い、生き残りを賭けた企業の合併、再編の話が連日のように経済紙面を賑わしています。

この合併を契機とした、駆け込み型の社史制作が最近、増えています。もともと社史制作というのは“わが社”のアイデンティティを確認する作業です。

そのアイデンティティ喪失の危機を目前にして、これまでの歩みを記録しておきたいと考えるのは自然な成り行きですが、切迫度が高いだけに、その編纂作業はとても求心性の強い活動になります。先ごろ納めた某中堅証券会社の70年史の制作過程も、その典型でした。

同社は2年前にA社とB社が合併してできた会社でしたが、相次ぐ金融再編の結果、この4月に他社に吸収合併されることになり、急きょ社史制作が決定しました。制作期間もわずか4カ月という文字通りの駆け込み制作でした。

しかし、前回合併して2年足らずでしたから、まだ社内は二派に分かれる傾向にあり、社史制作も例外ではありませんでした。

当初はA社側とB社側の担当者でそれぞれ自己主張が強く、互いに牽制しがちで、当社の編集担当者も、両者の顔を立てるのに右往左往するなど、一時はどうなることかと気を揉みました。

しかし、合併までの限られた時間内で社史をまとめ上げるという使命感のもと、徐々に足並みがそろい、互いを尊重する姿勢も現れ、最後は極めて円滑なコミュニケーションの下で、4カ月で500ページを超える社史を見事に完成されました。

このように、社史制作を通じて社内の求心性が高まるのは珍しいことではありません。合併などのような体制の急変がなくとも、親会社からの出向組とプロパー社員の間のコミュニケーションが、社史制作を通じて円滑化した例などもあります。

しかし今回は、きわめて短い期間の密度の高い作業だっただけに、その現象も鮮やかで、私たちにとっても充実感のある印象深い仕事になりました。
(企画営業担当 宮正 肇)

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