こぼれ話 自分たちの社史”にするには?
自分たちの社史”にするには?
■社史製作が促す社内交流
社史製作は、資料・写真の収集はもちろん、取材や原稿チェックの段階でも、社内の様々な部署の協力が不可欠です。そのため、社史の製作プロセスは海外や全国各地や事業所を展開する会社にとっては、交流促進の良い機会ともなります。
それをさらに一歩進め、全事業部の参加記事を企画したのが、プラスチック成型メーカーY社です。
■事業部の個性が滲む参加企画を
Y社は事業部間の需要先に対応して国内に5工場、海外に2工場を持ち、しかも事業部制を採っているため、事業部長・工場長クラスを除いてはなかなか交流がなく、社員が一体感を持ちにくい状況にありました。そこで、社史に事業部レポートという企画を盛り込むことにしたのです。内容は、その事業部の出来た経緯、仕事内容・特性、雰囲気や行事だけではありません。各事業部の個性が出るようにと、ご当地自慢コーナーも設けました。
■産みの苦しみもコミュニケーション
しかし、ここに至るまでには、かなり苦労もされています。見本をつけると、それに倣って同じようなものになりそうだという理由から、あえて見本なしで、執筆依頼を出したところ、内容だけでなく文字数までてんでバラバラな原稿が上がってきました。
執筆者が違えば、それぞれの原稿が抱える問題点も、それへの対処の仕方も違ってきます。中には書き直し依頼では埒が明かず、本社の編纂担当の方が電話で取材して直したものもありました。編纂担当の方は、一度はこの企画をやめようかと思われたそうです。
■社員が社史に登場すると読まれやすい?
完成した記事は、こうした苦労の甲斐あって、意図どおり個性の滲むものに仕上がっています。
「焼き鳥の美味なる味は、事業部員の心意気とエネルギーそのもの」(恒例の納涼大会の紹介)「来阪の節はぜひ威勢よく『まいど〜』といってお立ち寄りください」(方言の紹介)という具合です。
社史はともすれば、一般社員から経営陣と編纂関係者だけのものと思われがちですが、このように事業部レポートや部署紹介といったちょっとしたコーナーをつくって参加してもらうことで、「自分たちのもの」として関心を深めてもらえます。それが読書率の向上にもつながります。
そして、こうした参加を促す製作プロセスそのものが、日常業務のレベルを超えたコミュニケーションの深化でもあるのは言うまでもありません。
(編集担当 宮本典子)