こぼれ話 これぞ活性化! 社史を使った社員教育
これぞ活性化! 社史を使った社員教育
■社史を使って社内勉強会
取引先から会社の歴史や創業者のことを尋ねられたら、御社の社員さんは、きちんと説明できるでしょうか。
自分の会社のことですから、できて当たり前に思われがちですが、外国の方に日本文化を説明するのが意外に難しいように、日常身近に感じていることほど、体系的で理路整然とした説明は難しいものです
そこで社史の出番となるわけですが、配布しても読んでもらえなければ効果はありません。写真や図を多用したり、柔らかめの平易な文体を採用したり、写真年表形式にしたりと、皆さん企画にいろいろな工夫を凝らされるようになってきた理由のひとつがここにあります。
それをさらに突っ込んで、社史を使って社内で勉強会を開いた会社をご紹介しましょう。
■研究期間はなんと1年
機器商社のB社が社史の勉強会を開くことにしたのは、中途採用や新卒など社歴の浅い社員に会社説明を行うのに社史が便利だと考えたからだそうです。
しかし、この社員教育の一環という発想は社史の発行目的としては一般的で、これだけでは驚くにあたりません。B社のユニークなところは、「どうせ貴重な業務時間を割いて勉強会を行うなら、説明会や朗読会で表面的な理解を促すだけではもったいない、もっと大きな成果の上がるものにしよう」と考え、1年という長期にわたる勉強会を企画されたことです。
社史を章ごとに分け、各3、4名くらいのグループに割り振って、内容を研究させ、1年後にその成果を発表させることにしたのです。
■「まさに温故知新!」という成果
その成果を伺うと、経営史料の整理・保存がいかに大切かということがよくわかります。
顕著な効果としては、創業者や創業精神への理解が深まったことが上げられています。B社の創業者はエネルギッシュで個性的な方で、今でも取引先の古参社員の方々は親近感を込めて想い出話をされるそうですが、以前は若手の社員だと適当に話を合わせるのが精一杯だったといいます。それが、勉強会を行った後は生きた会話になったそうです。
この成果は単に営業上の好感度アップにとどまりません。社外から創業の理念や社風を高く評価されているという実感を抱くことは、社員の自信や誇りにつながり,モラールアップの点でも、大きな効果があります。
意外な成果としては、すでに生産中止になったにもかかわらず、いまだに現役として使われている息の長い商品があることに気がつき、これが新しい商品の企画・開発のヒントになったということが挙げられています。
この話をうかがった時、私は「これぞまさに温故知新!」と膝を打ちました。産業革命の提唱者A・トインビーの言うとおり、「歴史を尊重する企業には将来がある」のですね。