業界社史の研究 3. 電気機械器具製造業編

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日本の近代化に尽くし、将来を支える姿が凝縮された社史

この業界は、重電、家電、電子機器、電子部品等といった新旧の業種や企業が入り交じり実に多彩である。  明治以来の殖産興業の時代は、国策のもとに成長した。敗戦後は、経済の成長とともに拡大と変容、離合集散を繰り返している。

そしていま、この業界の社史を振り返ると、ある意味でその時代をリードしてきた基幹産業の変遷を見る思いがする。 重電メーカーから見てみる。

日立製作所は、本社としての社史を50周年、75周年で発行している。また、その多種多様な製品を生産している各工場ごとの歩みを『工場史』という形でまとめている。 東芝も、昭和38年に1024頁におよぶ『85年史』を作ったあと、昭和52年には700頁を越す『東芝百年史』を制作している。 三菱電機の場合も、全社的な社史のほか、『工場史』『研究所史』のように部門ごとの歴史をまとめている。 というのは、それらの企業は事業内容が余りにも多岐にわたり、1つの視点ではくくりきれないからであろう。

家電はどうだろうか。

松下電器産業は、『創業35年史』『50年の略史』などの他、創業者・松下幸之助氏の経営理念を新入社員に伝えるための、1頁当たり30字×10行の大きな活字組で1点の写真もない『社員読本』や、広告の歩みをまとめた『宣伝史』を作るなど、企業の歴史を幅広い視野で見てしっかりとまとめている。

また、『テレビ事業部25年史』は、昭和25年から53年までの足跡を、事業部の節目ごとに区分し、その章ごとに口絵目次・本文・できごと(日誌)・コラムを設け、章ごとに完結させるという構成をとっている。

この業界の社史を見て感じるのは、ビジュアル化の工夫である。

シャープの場合、昭和37年に『アイデアの50年』というタイトルで、115頁すべてをほとんど写真構成にした社史を制作している。工場、製品、広告、福利厚生、文化活動などが写真説明文によって語られており、いわゆる本文らしきものはほとんど見当たらない。

『日本ビクターの60年』は、前半部分は上に会社の歴史的なできごと、中央にそれに関連した写真(5〜7点/頁)、下に本文というレイアウトをしている。そして、直近10年については、上に写真、中央に本文、下には少ないスペースでできごとを記述するというスタイルをとっている。

スタンレー電気の『写真でつづる50年 1920-1970』は、500点以上の写真を使用して、創業者の足跡や会社の歩みを紹介している。昔の職場風景や、クラブ活動、広告・宣伝の写真なども活用しており、写真で構成する社史づくりの1つの方向を示すものである。 『アイデアの50年 早川電機工業50年史』も、本文はほとんどなく、全編写真で構成されている。

NCRの『NCR 1884-1922』もユニークである。21×21センチのケースには、6カ国語で『新たな飛躍』のタイトルがデザインされ、中身もキャッシュレジスターから情報化社会に至るまでの技術の変化にあわせた4分冊になっている。全体は、創設者を基にした読み物であり、そのレイアウトも4列組みの本文を自在に使った斬新で自由奔放なものである。

一方、日本IBMが編纂した『コンピュータ発達史』『情報処理産業年表』の2冊は、ハードとソフトの両面から、コンピュータおよび周辺装置の歩みを丹念にまとめてあり、この2冊でコンピュータ業界の歴史を知ることができる。

 

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