『技術・人・そして未来へ 日本交通技術株式会社50年史』
技術力をアピールするためにプロジェクトを掘り下げて簡潔にまとめました。
A4判、224ページ、上・並製本、2008年8月発行
日本交通技術株式会社 総務部 担当部長 池田 晃司 様
社史発刊は初めてだそうですね。
今まで5年10年単位で、簡単な記録誌を制作していましたが、本格的な社史は初めてです。50年という大きな節目にあたり、ひとつの区切りとして当社の歩みを残そうということになりました。
今回、発刊の目的として、どんなことを重視されましたか?
当社は建設コンサルタントということで技術が中心の会社です。社外の人に、当社の技術力、仕事ぶりを理解してもらえる内容にするということを基本コンセプトにしました。
社史制作を決定されたのは、発刊のどのくらい前でしたか?
候補としてあがったのは2年ぐらい前ですが、最終決定を経て、実際に動き始めたのは、締め切りまで1年を切ってからでした。昨年末に構成案が固まり、原稿が出揃ったのが2月、座談会を開催したのがゴールデンウィーク明けと、完成予定日の3カ月前。創立記念日に間に合わせるため、かなりタイトなスケジュールとなりました。
編纂体制はどのように組織されましたか?
トップに常務がいて、その下に私、本社各部から各1名、4支店からも各1名ずつ集めました。若い社員が中心の計17名で、入社3年目の人間を筆頭に、30代、40代と幅を持たせました。若い社員は昔のことはよく知りませんが、社史制作において固定観念で動かないという面で柔軟な発想をもたらしてくれました。もちろん、彼らは実作業を通して、会社の生い立ちや流れを理解していってくれただろうと思います。
制作においては、担当を明確に決め、各々の責任でスケジュールを消化してもらったということですが、その理由は?
担当を決めないと責任の所在が曖昧になるというのがひとつ。また、トップダウンで進めると、若い人が言いたいことをいえなくなります。そこで思い切って、それぞれ担当を割り振り、何の制約も課さず、自由に考えていいというやり方をとりました。各担当者が、それぞれ関連する原稿のチェックから資料や写真の収集手配まで責任をもつというやり方です。これは「すべてにおいて参加意識を持たせる」という社長の考えでした。
本社史は、沿革ではなく、各プロジェクトの記述が中心となっていますね。
当社は新幹線を作るためにできた会社でして、東海道新幹線、山陽新幹線をはじめ基盤整備の設計施工にはすべて携わってきました。そこでの技術力をアピールするためには、各プロジェクト個々を取り出し、掘り下げていく形が最良と判断しての構成です。というのも、当社のプロジェクトは非常に工期が長く、いくつものビッグプロジェクトが平行して進んでいますので、通常の社史のような章立てにしても枠組みに収まりきらない面があります。技術力をアピールするという原点に立ち戻ると、今回の発想がベストでした。各プロジェクトにも設計基準や耐震基準の変化など時代背景が絡んでくるので、沿革は極力コンパクトに、数ページに留めました。
このプロジェクトの記述はすべて見開き完結で構成している点が目を引きます。
本社史を手に取る人には1ページでも2ページでも興味を引いたところを見てほしいという希望がありました。長々と続けても読んでもらえないとの考えから簡潔にまとめたのです。特に気をつけたのは、専門誌ではないので学術的な記述は避け、工事史というか各プロジェクトの紹介的な内容とした点ですね。興味があれば細かく聞いてきてもらおうという判断です。
原稿は実際のプロジェクト担当者が執筆されたのですね。
実際にプロジェクトの担当者にしかわからないことがありますからね。想定外だったのは、皆さん思い入れがたっぷりで、2ページで依頼したところを5ページも6ページもオーバーしてしまいました。文章を削ると「俺がいいたいところが切られている」といわれるなど、いかに削るのかの判断と、執筆者の了承を得るのにはずいぶん苦労しました。
ほかに制作に当たって苦労されたことはありますか?
悩んだのは、社史の方向性という面で、100%外向きとするのか、100%内向きとするのか、という判断です。どちらを取るかで内容は大きく変わってきますから。今回は今後入社する新人が当社を理解できるものになればいいと割り切って進めました。どちらにも配慮しようとしたら、まとまりの悪い内容になったと思います。
配布後の内外の反響はいかがでしたか?
社外の方からは「立派なものができたね」とずいぶんお褒めの言葉をいただきました。社内でも「もっと(取引先に)持って行きたいけど予備はある?」と聞かれたり、若手社員からは「うちの会社はこういうふうにできたのですね」との感想があったり、おおむね好評でしたね。当社では現在動いているプロジェクトが数多くあり、どうしても今が中心となってしまいます。若い社員に会社の歴史を知ってもらえたのはよかったですね。
これから社史を担当される方にアドバイスがありましたらお願いいたします。
うーん、楽しむことじゃないですか。担当となる方は、専任の方も二股の方もいらっしゃるでしょうが、決まったら、前向きに考えてほしいですね。腹の立つこともありますけど、楽しいと思いますよ。
どうもありがとうございました
■日本交通技術株式会社
鉄道、道路をはじめとする交通基盤整備に必要な設計業務を中心に、「使いやすく安全な交通施設」の実現に取り組む会社です。