こぼれ話 対談・座談会の効用
対談・座談会の効用
雑誌やムックなどで多用される編集手法のひとつに、皆様よくご存じの対談や座談会があります。
話し言葉なので読みやすく、出席者の個性が現れて親しみやすいので、そういう記事から先に読むという方も少なくないと思います。
近年では社史・記念誌でも読ませる企画としてすっかりお馴染みの手法になっています。
■現在進行形を活写する未来編
対談・座談会という手法が最も多用されるのは、未来編(将来展望)です。
会社の将来計画といえば、公式的には長計、中計といった経営計画ですが、多くは机上の理論の段階ですから、過去の記述に比して空疎な印象の記事になりがちです。しかし、ここは未来に向かって現在進行形である我が社を活き活きと見せたいところでもあります。そこで、経営トップと識者の対談、経営者と若手社員の座談会などによって、未来に向かって現在進行形の我が社を"活写"するわけです。
例えば、社内報の特別号という位置づけで、社内活性化に主眼をおいた記念誌を発行された部品メーカーK社では、未来編を冒頭に掲載。これを女性アナウンサーによる経営トップのインタビューと、中堅社員座談会、若手社員座談会の3本で構成しました。
雑誌でいえば特集並の扱いで"社員に読ませる"未来編としたわけです。
■現場の雰囲気をいきいき伝える効果
座談会には堅い雰囲気を和らげたり、現場の雰囲気をいきいきと伝える効果もあります。
経営資料、技術資料としての価値に重点をおいた機器メーカーN社の70年史は、未来編にも大学教授による業界展望など情報重視の記事を載せましたが、せっかくの周年記念出版だから「夢」を盛り込みたいと、締めくくりを若手技術者による近未来技術の座談会としました。
この座談会は司会を作家の方に委ねる仕掛けも功を奏して、近未来SFの趣もある楽しい座談会に結実。社史に華を添えたばかりでなく、若い技術陣の活発な提言が同社の研究開発のポテンシャルを伝えるPR効果も発揮しています。
■往事の雰囲気が伝わる懐旧座談会
雰囲気が伝わるという意味で、座談会は往事のエピソードの収録にもうってつけです。
どこの会社でも、創業期は波瀾万丈で、掲載したいエピソードがたくさんあるものです。しかし、全体のバランス上、割愛せざるを得ないということが少なくありません。
そこで、社史本編とは別に、OBや古参社員の懐旧座談会を設けて、記録にとどめるという手法がよくとられるわけです。
この懐旧座談会で特に印象に残っているのは10年ごとに社史を発刊している部品メーカーH社です。同社では70年史の目玉企画として、創業期(昭和初期)に活躍した工員さんたちの座談会を掲載しました。
社史編纂中に、たまたま創業者の出身地近くの村に複数ご存命であるという情報が得られて、急きょ掲載が決定した企画でした。
なんと平均年齢80歳超というこの座談会は、同社最初の社史である40年史が創業者没後の編纂であったために十分に描写できなかった創業直後の雰囲気を伝える貴重な記録となりました。「間に合ってよかった。定期的に社史を作っていると、こういういいこともあるんだな」という会長さん(創業者のご子息)の述懐が忘れられません。
(企画営業担当 吉田武志)