『100年の歩み 北総地域とともに一世紀 1908~2008』
会社に愛着を持ち、歴史に興味をもって取り組めば、
中身の濃い、読まれる社史が自然と出来上がります。
A4判、上製/並製、204ページ、2008年11月発行
千葉交通株式会社 総務部総務課 課長補佐 奥田 直弘 様
100年史制作決定の経緯と、それが発刊のどのくらい前だったのか教えてください。
100年史の編纂室長を務めた小澤勝己さんへの正式依頼は、発刊の約2年前、2007年の新年会席上でした。当時系列会社役員だった小澤さんは新年会の約2年前、社長と車で出かけた折、道すがら当社が鉄道会社だった頃の軌道跡の説明をしたそうです。まったく面影を留めていない街を見たこと、会社の歴史に興味を持つ小澤さんの存在を知ったことがきっかけで「そろそろ100年。せめて社史は作りたい。協力してくれないか」とその時言われたとか。小澤さんはまさか本当の話になるとは思っていなかったようです。
以前発刊された60年史と違い、100年史は「歴史の記録」に重点を置かれたようですね。
60年史が写真中心(B5判・40ページ)でしたが、100年史はこの形というイメージが最初からあったわけではありません。社長から「予算枠は特に決めてない。体裁も構成もすべて任せる」と言われゼロからスタートしました。当社は鉄道、発電、バスと事業内容が著しく変化しています。その関係で古い資料は散逸し、所在もつかめていませんでした。それを集める一方で、OBや小澤さんの個人所有資料、また郷土史家の方々にご提供いただいた資料をもとに、まずは詳細年表を作ることから始めたのです。 その過程で、世間に認識されてきた当社の歴史の一部は事実に相違すると反論できる資料が見つかりました。そうした発見もあり、正しい情報を発信するには会社の歴史を正確に記録しておく必要があると再確認し、徐々に100年史の構想がまとまっていったのです。
旧路線図、全線時刻表などをまとめ、巻末に添付した「付録」が好評だそうですね。
本文に掲載された写真の中には、担当者自ら有給休暇を取って撮影に行かれたものもあると聞きました。
苦難を乗り越えてきた歴史を知るほどに、小澤さんも私も今まで以上に会社が好きになっていきました。頼まれて始めた作業でしたが、函館まで日帰りで資料調べに行ったり、休日や休暇を利用して撮影に出向いたり、資料を補足するためのイラストを書き起こしたりと自主的に作業に励みました。大変なこともたくさんありましたが、実に楽しかったですね。
全体の約4割を占める詳細年表には、その時々の営業報告書の概況を原文のまま掲載されるなど工夫がこらされています。この狙いを教えてください。
これだけのものをまとめられるには、しっかりした編集体制があったのでしょうね。
2007年3月上旬に編纂室を立ち上げ、年表は小澤さんが1人で作り、私は主に資料収集・整理にあたるなど、実作業は主に2人で進めました。でも私たちが楽しそうに作業をしていたからか、若い社員たちが興味を持って自主的に資料を探してきてくれたり、大量のコピー作業なども積極的に手伝ってくれるなど、思わぬ効果がありましたね。
そのほか制作にあたって苦労されたことはなんでしょうか?
当社の事業内容が創業時と変わってきており、また、これまで本社を何度も移転しているため、資料の多くは紛失しており、資料の収集にはとても苦労しました。 また、原稿の締め切り近くになって追加の資料が発見されたりするなど修正が続いたため、最後は時間にかなり追われてしまいました。
上製本・並製本の2種類を制作されていますが、その狙いをお聞かせください。
年表をより詳しく充実したものにしていく過程で、棚に飾られるのではなく、できれば時折取り出して読んでほしいという思いが強くなりました。写真はもっと大きくしたかったのですが、「読まれる社史」というこだわりを優先した結果、200ページを手に取って見るための重さの限度と考えました。読みやすさを考えれば並製がベストでしたが、お客様に配布する分は保存や見た目を考慮して上製にしたわけです。
配布後の反響はいかがでしたか?
同業他社の社長から「今後自社史を作る際の参考にしたい」と書かれた礼状をいただき、社史の中身をきちんと見ていただけたことをうれしく思いましたね。OBの方々からは在籍時の思い出を綴った手紙を多数いただきましたし、OBの集まりの中で「よくここまで調べたものだ」と話題になったと聞きました。家族で社史の話題でもり上がったとか、夫婦の会話が増えたという声もあり、頑張ったかいがあったと思います。
これから社史・記念誌を担当される方にアドバイスがありましたらお願いいたします。
社史制作の第一歩は制作会社(出版社)を選ぶことにあると思います。私たちの意見を取り入れ、イメージしているものを具体化するアドバイスがもらえるかで社史制作の成否が決まると言えます。 会社の規模や方針にもよるので一概には言えませんが、多人数で分担するのもひとつの方法ですが、中身の詰まった、おざなりでない社史を作るには歴史の流れを把握する専任者の存在も大事でしょう。会社に愛着を持ち、歴史に興味をもって取り組むことがいちばんではないかと思います。
どうもありがとうございました
■千葉交通株式会社