『タンケンシールセーコウ 半世紀の歩み』
記念パーティでの配布を目標にハードスケジュールをクリア。座談会の企画では活性化効果を狙って人選に配慮しました。
A4判120ページ、並製本 2005年5月発行
株式会社タンケンシールセーコウ 技術部開発課 課長 山内祐二 様
初めての社史制作で、しかも50年史。制作期間1年3ヵ月はハードスケジュールだったのではないですか?
実は、数年前に退社した元常務が、永年にわたって年表形式の詳細な記録をとっておられたんです。それがあったので、だいぶ時間が節約できました。社長は35周年を迎えたときから、50周年は帝国ホテルで記念の謝恩パーティを挙行して、社史を発刊すると決めておられたそうですから、本人に確かめたわけではありませんが、その意を体して準備されていたのかもしれません。それでも、ハードなスケジュールだったことに違いはありません。記念パーティでの配布という目標がなかったら、もっと時間がかかっていたかもしれませんね。
どのような編纂体制で臨まれましたか?
各部署から1名ずつ、これに委員長の常務を加えて12名の編纂委員会を立ち上げてスタートしましたが、いざ取りかかってみると、この多人数ではかえって実作業が進まないので、委員会の中から5名を選んで事務局を作ることにしました。常務を核に、技術・開発・研究・営業から各1名です。
技術畑中心の事務局ですね。
発刊目的の第一が技術発展史を記録し、次代の礎とすることでしたし、並行して企画されていた記念パーティのほうは総務が中心だったこともあります。
原稿は社内で分担執筆しておられますが、どんな点で苦労されましたか?
元常務の年表に多少の補足と近年分の記録を加えた段階で、必要な事項はほぼ網羅できたと判断しましたので、構成案(仮目次)の作成に入り、それに基づいて執筆分担を決めました。大変だったのは、原稿が上がってきた後でした。
用字用語や文体の統一で苦労されたのではありませんか?
確かにそれもありました。執筆要項は付けましたが、やはり枚数も文体も指示通りというわけにはいきませんでした。しかし、それはある程度は覚悟していたことです。問題はむしろ内容の取捨選択だったんです。技術的な内容が主体なので、社外にも配る社史には出せない事柄がたくさん書いてあって、これをどこまで削って、どこを生かすか判断しなければならなかったんです。
技術畑主体の事務局で正解だったわけですね。
ええ、でも、内容を削りながら文章をつなげて、なおかつ、文体や用字用語を統一してという作業は本当に大変でした。それから、人名や企業名もどこまで掲載するかの判断で迷いましたが、人名についてはごく一部を除いて社長名以外は掲載しない、企業名はイニシャルで表記する、ということで解決しました。
技術関係の記事といえば、資料編にも「技術系統図」「開発年表」「製造工程のフロー図」と力を入れておられますね。
あれは是非とも載せたかった。これまでは技術や開発の流れを体系的にまとめた資料がありませんでしたし、製造工程も一部をカタログなどに掲載したのを除いてフロー図にまとめたことがありませんでした。ところが、扱っているのが非常に特殊な製品なので、部品の製造現場の人たちには、自分の仕事がどこでどういうふうに役立っているのか見えにくいんです。だから、あれを見て、「初めてどうやって製品ができているのかわかった」「自分のパートがどう貢献しているのかわかって感動した」という感想があって、本当にやって良かった、苦労のしがいがあったと思っています。
社内活性化効果があったということですね。全社員の一言メッセージという企画もそれを狙ったものですか?
はい、これは「気持ちをひとつにするために、みんなの言葉を載せよう」という社長の言葉で決まりました。どこかの部署で作っている、というのではなくて、全社で作った社史という意識をもってもらうための企画です。
座談会にも活性化や参加意識という意図はありましたか?
その効果を狙って、人選に配慮しました。ベテランの座談会では、わざと各世代を縦断するように人選しました。単なる懐旧談に終わらせるのではなく、各世代の経験が共有できる場にしたかったんです。とても好評で、こういう会議をたまにやるべきだという意見が出てきたくらいです。
一方、若手座談会のほうは入社10年目くらいの社員を各部署横断で人選しました。この世代は次代を担う世代であると同時に、こうしたい、こうすべきという問題意識を持ち始めていて、それを誰かに伝えたいという世代でもある。だから、近い世代の社員が読んで共感する、問題意識を共有するだろうという狙いがありました。実は記念パーティの企画運営でも、この入社10年目くらいの世代が中心を担ったんですよ。
そうやって随所に工夫を凝らされて、反響はいかがでしたか?
実は配布後に、社内でアンケートを実施したんです。その回答を見て胸が熱くなりました。「家宝にしたい」「若手の考えていることがわかった」「創業者の気持ちがわかった」「両親が社史を読みたいと言った」など、これを読んで元気になった人が多かったのがよくわかりました。社史編纂を通じて、こんな機会に巡り会えたことがうれしくて、しばらくは余韻にひたっていたくらいですよ。
最後に、これから社史を制作される方々にアドバイスがありましたらお願いします。
最初にどういう本を作るのか、そのイメージを固めておくことが大事ですね。そうすると、相手が社内でも、社外でも、どういうものが必要なのか、どう作ってほしいのか伝えやすい。あと、専門の業者への相談は早いほうがよいですね。いろいろな問題にアドバイスをもらえますから、検討時間が少なくて済む。
編纂委員長を務めた常務は、編纂メンバーには完成させるんだと強く思い、努力をする人が必要だといっていましたが、実際に担当した者としては、自分が手元に置いておきたいような社史を作るということと、自分が会社の歴史を本に紡いでいく位置いるんだということを意識してやると、楽しんで取り組めるということを、中心になって社史に取り組む方へのアドバイスにしたいと思います。
ありがとうございました
■株式会社タンケンシールセーコウ プロフィール
産業用回転機器の軸封装置『メカニカルシール』の専門メーカー。摺動材料である『カーボン』を自社生産している世界唯一のシールメーカーです。